昨日は眠れませんでした・・・

次は自転車のちりんちりんの後日談でも書こうかな~
と思っていましたが、ちょっと書いておきたいことが出来ました。

ここから先は、ニガテな方もいらっしゃると思いますので、
白文字で書きます。

多少グロテスクな表現も含まれていますので、注意してください。



私はずっと、暗闇の中で死人の顔を想像していました。
恐怖による胃の不快感をおぼえながら、ベッドの上で何度も何度も時計を確認していました。

最後に見たとき、時計は午前3時をさしていたと思います。

いつもはお昼近くなってから起きだす私ですが、今朝は6時ごろに自然と目が覚めました。

今日は、うまれて初めての解剖実習でした。
カエルもフナも解剖したことのない私。その私が


人間を、解剖する日です。

御献体といって、
「自分の死後、遺体を医学?歯学の教育と研究のために役立てたい」
とお考えになって亡くなった方のご遺体を、私たち医学生が勉強のために解剖するのです。

正直に言って、恐怖で頭がいっぱいでした。

人間の、それも見ず知らずの人の遺体を切り刻んで、その後一人で暗いアパートに帰ってくる???

ホラーが苦手で、「学校の怪談」を本気で怖がる私がです。

霊魂に対する怖れに加えて、
「人が物質になってしまう事」に対しての気持ち悪さもありました。
私にとってどんなに大切な人であっても、ちょっと構成成分が変化しただけで、不可逆的にただの「モノ」になってしまう???。
もう「それ」には想いも何も存在せず、どんな治療も意味を為さない。
そう思っていたんです。

実習のことを考えただけで眩暈を覚え、吐き気止めの薬を飲んで学校に向かいました。


いつもはにぎやかな教室も、実習前のガイダンスのときばかりは誰もが沈黙していました。
白衣に着替え、実習教室の前に集合します。

教室の前には強いにおいがただよっていました。
ふと、小さい頃に家で作っていた梅酒の匂いを思い出しました。
(ホルマリンとアルコールのにおいなのでしょうか。)

教室に入ると、
24つの台と???、そのうえに乗った「ふくらみのある何か」をおおった白いシーツ。

全員が「自分の班に割り当てられた台」の側に立つと、教授はシーツを取るよう指示しました。

ひ???っ

と、声が聞こえました。私が出したのかもしれませんし、クラスの誰かだったのかもしれません。



最初に見えたのは手で、

ビニールの袋の中に液体と共に入れられたその皮膚は、生きている人間の皮膚とはまったく違う色と質感をしていました。

全身が強張るのを感じながら、私は
少しずつ、少しずつ、シ-ツをめくります。


ご家族の方が今どんなに会いたいと願っているか知れないご遺体が、私の目の前にいる――
全身が露わになり、お顔を拝見したとき、私はそう感じていました。


親しい人が生活から消えたとき、
遺骨や朽ちた遺体を見せられてはじめて
私たちはその人が「もうこの世にはいない」ことを理解出来るのではないでしょうか。

もしもまだ遺体が完全な形で残っているとしたら…

そして今日、バラバラにされるとわかっていたら…

私だったら、その最後の最後の姿に別れを告げたいと痛烈に願うはずなのに。


私がいま、不気味にすら感じたこの手を、ご臨終の際に泣いて握りしめたのは
奥様だったのだろうか、お孫さんだったかもしれない。


実習教室に入るまでの恐怖は嘘のように消えていて、
初めてにぎるメスの冷たさには徐々に体温の暖かさが宿っていきました。


私は今まで
身体を「単なる物質」と見ることで医学は進歩してきたのだと思っていました。
遺体は恐怖の対象でした。
でも本当は、身体は、その人の魂が外界に働きかけるための、一種の窓なのかもしれない。

クラスの全員で黙祷をささげた後、私は丁寧にご遺体にメスをいれていきました。

スポンサーサイト
1このエントリーをはてなブッ クマークに追加

COMMENTS

COMMENT FORM

TRACKBACK


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)